My Generation (自転車と本、あるいは音楽)

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『1Q84』 book3

1Q84」book3読破。book3を読む前にbook1,2も読み返したので、結構時間がかかった。(3冊あわせて1,600頁超)まずは率直な感想として、book3が出てよかったと思う。もちろん全部の謎がクリアになっている訳ではないけれど、book2読了時に感じた放りだされ感はかなり減少した感じ。

1Q84 BOOK 3

1Q84 BOOK 3

book1,2は青豆の章、天吾の章が交互に展開していったが、book3はもう1人の登場人物の章が加わっている。物語はあまり転がってはいかないけど、この新たな視点により緊張感が与えられている。そしてこの人物は2人の間で重要な役割を果たしている。ラストは意外に正攻法でまとめた印象。なので納まりとしては悪くないけど、これだけの大作のラストとしてはちょっとこじんまりしてる気もする。(幻想的で美しくはある)book1,2では割と社会的なことがテーマだった感じだが、book3ではそれはちょっと脇に回った感じでなんというか「スプートニクの恋人」的なのです。言い切ってしまうならbook3は恋愛小説だろう。社会的なテーマが奥に引っ込んだ分、置き去り感がないような感じ。でも回収されてない謎も多いし(そもそも作者に回収するつもりもないのだろう)、本作のテーマというか問題提起というか、読者個人に考えてと言われてるような気がして、「読み終えた」感じがあまりしないです。
あと、なんとなくだけど「1Q84」はチャンドラーの影響が他の作品に比べて色濃い気がする。直接的にはタマルという人物がハードボイルド的であるけど、それだけでなく比喩がチャンドラー的と感じた。(春樹作品はどれも比喩が特徴的ではあるが)
book4(あるいはbook0?)があるのだろうか?できれば続きを読んでみたいですね。