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My Generation (自転車と本、あるいは音楽)

自転車での走行記録とか好きな本や音楽などをメインにお届けします

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 −村上春樹−

book

村上春樹氏の「1Q84 BOOK3」以来になる3年ぶりの新作が出た。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

何というか変わったタイトルであるが、読んでみると内容そのままという感じで納得。
今作は「ノルウェイの森」か「スプートニクの恋人」のような手触りで、夢か現実かはよくわからないような事柄は出てくるけど、あまりあからさまではなくて、そういう意味ではリアリズムで書かれていると言ってもいいのかも。主人公が名古屋近郊の公立高校に通っていたという設定になっていて(私と同じである)、そういう具体的な設定というのは村上作品では結構珍しい気がする。(特に詳細な描写がある訳でもないし、あまり必然性があるとは思えないが)
で、感想なんですが...消化不良かなあというところ。「海辺のカフカ」や「1Q84」のような非リアリズムな作品が長編では続いていたし、氏が以前から「カラマーゾフの兄弟」のような総合小説を書きたいと発言していたこともあって、リアリズムでの大作が出るといいなと思っていたのだが、そういう意味では物足りないんですね。今作は短編を書くつもりが長くなったという話だけど、確かに話のマテリアルとしては長編という感じがあまりしないし(300Pは超えているがスラスラ読めるのでそれほど長い小説に思えない)、内容的に総合小説という趣きでもないので、肩透かしな感じである。中頃に出てくるなにか意味深なエピソードも後半ではまったく触れられず中途半端な感じがするし、ラストもお決まりではあるが「スプートニクの恋人」のように白黒だけはつけて欲しかった気がする。やはり氏の本領は「海辺のカフカ」や「1Q84」のような非リアリズム作品にこそ発揮されるのかなあとも思った。