「気仙沼ニッティング」、「東北コットンプロジェクト」
震災後に東北に発生したまちおこし的な取り組みについて取りあげた本を読んだ。
- 作者: 御手洗瑞子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/08/19
- メディア: 単行本
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こちらは気仙沼ニッティング(http://www.knitting.co.jp)という、宮城県の気仙沼市で手編みのニットを販売する会社が立ち上がり、商品を販売するようになるまでを記した本である。このプロジェクトは糸井重里氏の発案によるものだが、この本の著者は現在社長を努める御手洗さんという方で、もとは経営コンサルなんかをされていたのだそう。
気仙沼というところは水産業が盛んで遠洋漁業の基地的な町であるため、漁業に使う網を編むということが日常的に行われていたということがあり、いわゆるフィッシャーマンズ・センターを気仙沼から世界へというコンセプトでプロジェクトが立ち上がっている。実際に気仙沼にお住まいの方が編手となり1着ずつ手編みされている。
手編みということで商品がそれほどたくさん供給できないため、購入は基本的にオンライン(抽選)か気仙沼にある直営店でしか買えないようです。なかなか(かなり)高額な商品*1でファストファッション全盛のこの世の中、このような値段で売れるのだろうかと思ってしまうけど、需要はたくさんあって供給が追いつかないみたい。
地域に仕事ができ、利潤も出ていて、継続していける、という点は素直に素晴らしいなと思います。
- 作者: 宮川真紀,中野幸英
- 出版社/メーカー: タバブックス
- 発売日: 2014/06/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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もう一つは東北コットンプロジェクト(http://www.tohokucotton.com)について書いてある本。こちらはいろいろな企業が集まって一つのプロジェクトを運営している。もともとは大正紡績の近藤という方が、あるアパレルのフェアでメーカーに対して「東北で綿栽培をやるから収穫できたら買って欲しい」と訴えたのがきっかけとなりプロジェクトがスタートしている。綿を栽培しているのは津波の被害にあった農地である。宮城は米どころとして有名だが、米は塩分濃度が高いと育たないので、一度海水に浸かった土地は数年間は塩抜きをしないと稲作は出来ないのだが、綿は塩に強いため洪水の被害にあった土地で綿を育てるというのは世界的にポピュラーなことらしい。
綿作は江戸時代は日本の各地で盛んに行われていたが、明治になり海外から輸入されるようになって急速に廃れてしまったため、なかなか国内にノウハウが残っていなかったり、東北の気候が必ずしも綿作に適していないためになかなか大変なようだ。綿は塩には強いが水には弱く、台風で被害を受けて収穫に影響があったりと供給が不安定で「東北コットン」だけで製品を大量に生産できるほどではなく、各メーカーも限定商品として販売している。
当初は稲作のできない農地でコットンを栽培し、いくらかでも収益を農家に還元するという救済的な側面が強かったが、段々と東北にコットンを根付かせ、雇用を産み収益を得て地域復興に貢献するという目的にシフトしつつあるようだ。
私は綿が好きでTシャツなどは綿100%のものがよい。スポーツ時に着るものは機能的に優れる化繊が多いけど、普段着は綿が多い。やっぱりコットンの肌触りがよいです。東北コットン、機会があれば買ってみたい。
*1:完全オーダーメイドのカーディガンで15万円を超える