My Generation (自転車と本、あるいは音楽)

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「小林・益川理論の証明」立花隆

先日、鈴木章氏と根岸英一氏がノーベル化学賞を受賞された。大変喜ばしいことである。ノーベル賞にちなみ、わたしがご紹介するこの本は、2年前にノーベル物理学賞を受賞された小林誠先生*1益川敏英先生が1973年に発表された「小林・益川理論」について、立花隆氏が紹介している本である。

立花隆 小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力

立花隆 小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力

小林・益川理論」というのは素粒子物理学の極めて根幹の部分での予測をしたもので非常に重要で画期的なものである。それはこの論文が世界の研究者から引用された回数のランキングでずっと第2位*2を占めていることでも証明されている。その予測というのは大まかに言うと(本当は非常に難解で、わたしごときシロウトが説明できるようなものでもないのだが)”もし、クォークが少なくとも3世代・6種類存在すればCP対称性の破れを説明できる”というものである。で、この論文の凄いところは発表当時はクォークは3種類しか見つかっていなかったという先見性にある。その後実際にクォークは6種類発見されたのであるが、発見されるまでに時間がかかったためにノーベル賞受賞も遅れたのである。
では、「CP対称性の破れ」*3というのは何か?ということなのであるが、我々の宇宙が存在することを説明するために非常に重要な現象である。以下、わたしなりに説明すると(誤りがあればご指摘ください)...
素粒子の世界では陽子に対する反陽子、電子に対する陽電子のように粒子に対する反粒子が必ずある。粒子と反粒子が出会うと対消滅を起こし、粒子も反粒子も消えて光(エネルギー)となってしまう。また粒子に対する反粒子は基本的に鏡像のようなもので、例えば陽電子電荷がプラスの電子であり、電荷のみが違いその他の性質は同じである。これを対称性があるという。(対称性があるからぶつかると対消滅を起こす)ビッグバンで宇宙が創世されたときには粒子も反粒子も同じだけ生成される対生成という現象が起こっていたと考えられているが、それでは対消滅によって全部消滅して宇宙は存在しないはずである。しかし、我々の宇宙はちゃんと存在し、しかも粒子から構成されているものがほとんどである。粒子と反粒子がぶつかっても消滅しないことがある、すなわち「CP対称性に破れがある」から消えずに残っている*4と考えられているのである。

小林・益川理論」では「CP対称性に破れがあるのはクォークが3世代・6種類あると説明できる」とした理論であるが、残念ながらわたしの頭脳ではなぜそうなるのかを平易に説明できないので、興味がある方は図書館で借りてみてご一読ください。

*1:実は小林先生は私が卒業した中学校のOBなのである。

*2:ランキングの1位、3位は既にノーベル賞を受賞していた。

*3:Cは電荷、Pは座標。

*4:基本的には消滅してしまうのだが、ある条件の中では一定の確率それもかなり小さい確率で消滅しない場合がある。