My Generation (自転車と本、あるいは音楽)

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宮本輝「田園発、港行き 自転車」

宮本輝の最新作「田園発、港行き 自転車」は氏の縁の土地である富山県が舞台だった。

田園発 港行き自転車 (上)

田園発 港行き自転車 (上)

田園発 港行き自転車 (下)

田園発 港行き自転車 (下)

本作は北日本新聞に連載されていたのを単行本したもので、北陸新幹線の開通に併せて出版されたものである。なので、半年くらい前に店頭に並んでいる。私も発売とほぼ同時に買って程なく読み終えていたのだが、ブログに書こうと思いながらも半年が経ってしまった。

本作のキーワードは「自転車」と「富山」。いろんな登場人物が2つのキーワードを軸に交錯する。またこの物語は2つの家族「賀川家」と「脇田家」を中心とした物語でもある。東京で暮らす絵本作家の賀川真帆が「賀川家」の代表である。一方の「脇田家」は富山県入善町にあり、上京してOLをしていた脇田千春は東京にどうしても馴染めずに故郷に帰る。2つの家を繋ぐのが真帆の父で、自転車メーカーカガワサイクルの社長だった賀川直樹は15年前に富山で謎の死を遂げていた。父の死の謎を解き明かしたくなった真帆は京都にある自分の絵本の出版社で自分を担当してくれている編集者の多美子を伴い富山へ行き、自転車で現地を走り回る。そのことが運命の歯車を回し、思わぬことが明らかになってくるー

他にも魅力的な登場人物がたくさん登場する。脇田千春の東京時代の上司である川辺は娘の不倫に頭を痛めている。川辺の同級生でバーのバーテンダー日吉、千春の甥っ子で誰からも可愛がられる中学生の佑樹など枚挙に暇がない。上下巻で800頁くらいあるが、様々な登場人物が織りなす群像劇、そして群像の物語が動いた時の醍醐味が味わえて一気に読めます。いろんな人物がいるので感想は人それぞれだと思う。私は読み終わった後、なんか清々しい気分になった。

そして舞台となる富山県が素晴らしい!昔ながらの風情が残る「北国街道」、キラキラと光る日本海を望む富山湾、その富山湾に注ぐ清流黒部川黒部川のほとりには田園が続く。そして宇奈月の手前にある赤い「愛本橋」。そのバックには雄大な立山連峰がそびえる。

前にも富山を自転車で走る企画はあったのだが、果たせずじまい。ますます富山を自転車で走りたくなってしまった。でも、リベンジは来年かな。