「地方消滅」
896の市町村が消滅の危機にあるとしたいわゆる「増田レポート」をご本人が解説した本を読んだ。
- 作者: 増田寛也
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/08/22
- メディア: 新書
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この本では人口の減少、その結果としての地方衰退について下記のようなことが説明されている。
- 出産適齢期にある女性の数が減っている(団塊ジュニアが出産適齢期から外れてしまった)ので出生数も減っており、日本全体として人口は減っていく。
- 地方では若い女性が都会に流出しており、子供が生まれないことと高齢者が亡くなることで人口減が加速される。
- 人口流動としては首都圏では流入超過しているが、地方で流出超過であり、東京一極集中は是正されていない。
- 人口移動のペースが落ちないとして、20~39歳の女性が現在の半分以下になると推計された市町村が896あり、それらの自治体が消滅する可能性がある。
- 一方、都会では非婚化・晩婚化が進んでおり出生率が悪く(東京では1.07)人口減の一因となっている。
地方が消滅するというのは少し大げさに聞こえるかもしれないが、地方では少子高齢化の一つ先を行っていて、高齢者が減っていくという事態になっているという。人口増のベースとなる20~39歳の女性が現在の半分以下になり、最大のボリュームゾーンである高齢者も減っていくことで、2040年推計人口が半分以下になっている自治体が多発するという訳だ。人口減となれば税収が減り、今あるインフラを維持できなくなり、夕張のような破綻する自治体も出てくるだろう。とりわけ北海道、東北では80%、山陰75%、四国で65%以上の自治体が「消滅可能性都市」に当てはまるらしい。
対策としては下記が提言されている。
- 地方において人口流出を食い止めるダム機能を設ける必要があり、それを地方中核都市に再構築する。
- 中核都市より規模の小さい自治体はコンパクトシティ化を進める
- 中高年の移住を促進し、若者の定住を図る。
対策についてはあまり具体的でない部分もあるが、今までもずっと東京一極集中の是正とか地方の活性化について話はあったが結局是正されておらず、有効な対策はそう簡単には見つからないのだろう。結局のところ地方での一過性ではない仕事がないといけない(ハコモノ作って終わりではなく)と思う。そういう意味では農業とか漁業の第一次産業なんかをもっと見直さないといけない気がする。
この本に書かれていることで一番驚いたことは、「2000年からの10年間で東京でも65歳以下の生産年齢人口は約30万人減少した」ということ。30万人というと、松下グループとか日立グループの総従業員数ぐらいである。グループがごっそり消えてしまった訳で7兆とか8兆円を売り上げる企業がなくなったと考えると、ちょっと大変なことではないだろうか。
ところでこの本、新書大賞を受賞したようだ。今の日本を考えるきっかけにはなると思います。